

はじめに


- 塗装業者に「無機塗料」をすすめられたけど、本当に良いものなの?
- あまり聞いたことのない塗料だけど、実際のところ性能や費用は?
- うちでもちゃんと使えるの?
…など、気になっている方も多いのではないでしょうか。
無機塗料とは、ここ数年で開発が進んで登場した次世代塗料です。
これまでのシリコン塗料やフッ素塗料以上の、抜群の耐久性を誇ります。
国内の大手メーカーも戸建て向け商品を発売し始めており、これから塗装をお考えの方にはぜひ候補に入れていただきたい塗料です。
本記事では、無機塗料の基礎知識とメリット・デメリット、選ぶ時のポイントを解説します。
自分に合っているかも、と思った方はぜひ業者から見積もりを取ってみてください。
また最後には、主要メーカーのおすすめ無機塗料や施工事例も紹介しています。
検討する際の参考にしてみてください。
無機塗料とは
無機塗料とは、「無機物(炭素を含まないもの)」を配合して作られた塗料のことです。
例えば、ガラスや鉱石などが無機物です。紫外線で劣化せず、非常に硬くて燃えにくい性質があります。
無機塗料の場合は主にセラミックやケイ素を主成分にしています。
一方、これまでの一般的な塗料は「有機物(炭素を含むもの)」を主成分にしているので有機塗料と呼ばれます。
有機物は、例えばアクリル、ウレタンなどの樹脂のことです。
こうした有機樹脂は柔軟性に富んでいますが、紫外線によって劣化してしまいます。
無機物100%なら半永久的に劣化しないものができますが、そうすると流石に硬くて建物に塗ることはできなくなってしまいます。
そのため、無機物の耐久性を活かしながら、有機物を混ぜて使えるようにした塗料が「無機塗料」となります。
(塗料メーカーによっては、「無機有機ハイブリット塗料」という表現を使うこともあります。)
4つのメリット
無機塗料は、他の塗料と比べて非常に高い性能を持っており、近年大手メーカー各社も戸建て向け商品を発売し始めました。
主なメリットは、
- 20~25年もの高い耐候性がある
- カビコケが繁殖しにくい
- 汚れが落ちやすい
- 燃えにくい
というものです。
それぞれを解説しますので、具体的にどんな塗料なのか見ていきましょう。
20~25年もの高耐候性


無機塗料最大のメリットは、何と言ってもその耐候性(紫外線に対する強さ)です。
これは、無機成分自体が紫外線での劣化をほとんどしないからです。
石や岩は何十年とずっと外にあっても、ぼろぼろになったりしないですよね。
無機塗料の耐用年数は20~25年で、フッ素を押さえて最長です。
カビ・コケが繁殖しにくい
無機塗料は、カビ・コケ・藻が生えにくい性質(防カビ・防藻性)を持っています。
なぜなら、カビ・コケなどの栄養分である有機物の含有量が少ないからです。
(完全に滅菌するわけではありません。)
カビ・コケは建物の見た目を悪くしてしまいますし、根を張ることで建材自体を傷めてしまいます。
無機塗料を使うことによって、見た目を綺麗に保つこともでき、壁や屋根の素材そのものも保護することができるのです。
汚れが落ちやすい
無機塗料は、表面に着いた汚れが雨で流れ落ちやすく、美しさを保ってくれます。
水となじみやすい「親水性」という性質をもっているためです。(低汚染性とも言います)
例えば、砂埃や排気ガス、鳥のフンなどが外壁に付着することがあると思いますが、雨が降ると塗膜と汚れの間に水がするりと入って汚れを流してくれるのです。
※汚れがすべて完全に流れるわけではありません
大通り沿いなどどうしても汚れが付いてしまう立地のお家には、とても嬉しい機能です。
燃えにくい
無機塗料は非常に火に強く、燃えにくいという利点があります。
そもそも無機物が燃えにくい(不燃性の)ものだからです。
有機物は燃えると二酸化炭素が発生し、黒く焦げて炭になります。
一方、無機物であるガラスや石は火をつけても燃えてなくなったりしませんよね。
無機塗料は100%無機ではなく、有機成分も含んでいるので、全く燃えないわけではないのですが、それでも有機塗料と比べて十分燃えにくいです。
万が一近隣の火事などが飛び火してきても燃え移りにくいため、二次災害の確立を低くすることができます。
3つのデメリット
無機塗料は非常に優れた塗料ですが、万能というわけではなく、デメリットも存在します。
ここでは大きく分けて3つを紹介します。
一生に何回もない塗装工事ですから、注意点もしっかり理解した上で決定し、こんなはずではなかったという失敗を防ぎましょう。
価格が高い


無機塗料は高機能で長く持つ塗料ですが、その分費用が高いです。
塗装は家全体を塗っていきますから、単価だと数百円の差でも、工事全体だと数万~十数万円の差になってきます。
無機塗料を使いたいけれども金額面がネックだという方は、ローンの活用を視野に入れてみると良いでしょう。
月々の負担感が減って、将来の費用計画も立てやすくなります。
職人の知識・技術が必要
これは無機に限ったことではありませんが、塗装工事は職人の知識・技術が重要です。
どんなに素晴らしい塗料でも、施工の質が悪ければその性能を発揮することができないからです。
例えば、塗装前の下地処理が足りておらず耐久性が落ちたり、下塗り塗料(外壁材によって変える必要がある)の選定を知識が無いせいで誤って、せっかく塗ったのに剥がれてしまったり、という不具合が起こり得ます。
元々が性能の良い無機塗料だと、万が一工事品質が悪かった場合の落差というのも激しくなってしまいます。
せっかく真剣に選んで塗装したのに、無駄になってしまっては意味がありませんよね。
しかも無機塗料は一番新しい種類ですので、まだ使った経験がない・知識がない業者も当然存在します。
無機で塗装をお考えの方は、“無機塗料の”施工実績が豊富な業者に依頼するようにしましょう。
無機塗料の中でも質に幅がある
一口に無機塗料と言っても、実は様々な種類があり、中にはシリコンやフッ素とあまり変わらない耐久性のものもあります。
なぜなら、“無機物が何パーセント含まれていたら無機塗料”という定義が決まっていないからです。
例えば、シリコン系塗料にほんの数パーセント無機成分を入れ込んだだけでも、無機塗料と表記できてしまいます。
質のよい無機塗料を選ぶには、実績のある大手塗料メーカーの製品で、カタログなどにきちんと試験結果(促進耐候試験や屋外暴露試験という、紫外線に当てて劣化度合いを見る試験)が掲載されているか確認しましょう。
無機がおすすめなのはこんな人
それでは、無機塗料のメリット・デメリットを踏まえて、こんな方には是非お勧めしたい!というパターンをご紹介します。
自分もあてはまるなあと思った方は、ぜひ無機塗装を検討してみてください。
長期的なコストパフォーマンスをよくしたい
無機塗料は費用が高いのがデメリットですが、実は長期的に見ると安くなります。
なぜなら、耐用年数が長く、今後の塗り替え回数が少なくなるからです。
20年30年という長い目で考えると、耐用年数が長い塗料ほどコストパフォーマンスが良くなります。
長期的な目線で費用をお得にしたい方は、ぜひ無機塗料で塗装しましょう。
とにかく長く持たせたい、最後の塗装にしたい
無機は何と言っても、耐用年数が20~25年と非常に長いのが特徴です。
もうしばらく大きな工事はしたくない、家のメンテナンスはこれで最後にしたい、という方は無機塗料が合っているでしょう。
また、工事時に家の周りに組まれる足場やシートにストレスを感じる方もいると思います。
工事回数を減らしたいという場合にもぜひ無機塗料をご検討ください。
逆に、短いスパンで塗り替えたい、こまめに流行りの色に変えていきたい等のご希望のある方は無機塗料は適さないでしょう。
塗料は、今後のメンテナンス計画を考えてお選びください。
まとめ
無機塗料とは、無機物を配合して作られた次世代の高機能塗料です。
最高ランクの耐久性など多くのメリットがありますが、金額面などデメリットもあります。
長期的なコストパフォーマンスを重視する方や今後の塗り替え回数を減らしたい方にはぜひおすすめです。
各メーカーが戸建て向けの塗料を発売していますので、実績のあるメーカーの塗料を選ぶと安心です。
皆様の塗料選び、塗装工事のお役に立てれば幸いです。
お読みいただきありがとうございました。